2021年の8月25日から9月17日までの間、自宅で2-3分程度の即興演奏を行い、オーディオインタフェースとマイク、iPhoneを用いそれを記録した(できない日もあった)。録音した演奏はその日に撮影した写真とともにSoundCloud上にアップロードした。
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夏の間の少しの期間、毎日少しづつギターを弾いたのを録音する、ということをした。机の横に立てかけてあるギターを手に取り、その時の気分で音を鳴らす。誰かに聞かせるというよりは、日々の自分のコンディションを確かめるために。
演奏を続けることで、木材と6本の弦が振動することについてだんだんとわかっていく。自分のからだの一部になっていく。そうすると、自分のからだの一部であるギターを通して外の世界を感覚することができるようになっていく。無機質な物体が弦とこすれる感覚。アンプから出た音が部屋の中の空気と混じり合う感覚。そうした感覚によって、私の身体は拡張される。
雑音と楽音の間を行ったり来たりしながら、どこへ向かうでもなく歩く。私にとって、即興は散歩に似ている。同じ道を歩くたび街と自分の距離が縮まっていく。スニーカーのソールの厚みによって足の裏と地面の関係が少し変化することや、道端に置いてある石が時折少し移動していることに気づく。同じ道を歩いていてもその時々で考えることは異なる。
我々は目的を持たない即興的な「散歩」によって街との関係性を構築してゆく。同じように、即興演奏とは目的を持たずに楽器に触れることで、自分の身体と楽器、その周辺との関係性を構築していく行為なのではないかと思う。